政治•経済 パキスタンで相次ぐ中国人へのテロ攻撃 背景と深まる脅威
パキスタンで相次ぐ中国人へのテロ攻撃 背景と深まる脅威
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2025/12/20

パキスタン国内で、中国の権益や中国人労働者を標的としたテロ攻撃が相次いでいる。この現象は、単なる治安問題を超え、中パ両国の経済・安全保障協力の根幹を揺るがす深刻な脅威として認識されている。その背景には、中国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」の旗艦事業である中国・パキスタン経済回廊(CPEC)に対する現地住民の複雑な感情と、分離独立を求める武装勢力の存在がある。

CPECは、中国の新疆ウイグル自治区からパキスタンのグワーダル港までを結ぶインフラ開発プロジェクトであり、数十億ドル規模の投資が行われている。パキスタンの経済発展に大きく寄与すると期待される一方で、この開発が集中するバルチスタン州やシンド州では、その恩恵が現地住民に行き届かず、むしろ土地収用や資源の持ち出しが進んでいるとの不満が根強い。こうした地域では、伝統的に中央政府への不信感や分離独立の気運が高く、CPECに対する不満が反中感情へと転化しやすい土壌がある。

テロ攻撃の実行犯として最も注目されるのが、「バルチスタン解放軍(BLA)」などの分離独立派武装勢力である。BLAは、バルチスタンの資源開発を外来の勢力による「植民地主義」的行為と捉え、特にCPEC関連施設や中国人技術者を主要な標的としてきた。彼らは、自爆攻撃を含む大胆なテロを実行することで、プロジェクトの停滞と、パキスタン中央政府および中国への抵抗を国内外に示そうとしている。また、近年ではパキスタン・タリバン運動(TTP)などの他の武装勢力も、対立するパキスタン政府への圧力として、中国人権益への攻撃に加担するケースも見られる。

一連のテロ事件は、中パ両国間の「鉄の兄弟」と称される緊密な関係に深刻な影を落としている。中国は、自国民の安全確保をパキスタン政府に強く要求し、パキスタン側も専用の部隊を編成して中国人労働者の警備を強化するなど対策を講じているが、広大な地域に分散するインフラプロジェクトのすべてを守り切ることは困難である。警備強化は武装勢力との軍事的な衝突を誘発し、さらなる治安の悪化を招くリスクも孕んでいる。

この問題の解決には、軍事的な抑圧だけでなく、CPECの利益を現地コミュニティにも公平に分配し、雇用創出や社会インフラ整備に繋げるなど、現地住民の不満を取り除く「ソフト」な対策が不可欠となる。中国人へのテロは、パキスタンの地域紛争、分離主義、そして地政学的な大国間競争という複数の要因が絡み合った複雑な問題であり、その解決の道筋は依然として見通せない状況にある。

(ジョワキン)

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