政治•経済 懸念される北方領土の「中国化」
懸念される北方領土の「中国化」
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2025/12/16

北方領土は、第二次世界大戦終結以降、ソ連およびその後を継いだロシアが実効支配を続けている、日本固有の領土である。この領土問題は日ロ間の長年の懸案であり続けているが、近年、ロシアと急速に接近する中国の影が、この地域にも忍び寄りつつあることが、新たな懸念として浮上している。

当然ながら、「北方領土の中国化」とは、中国が領土そのものを自国のものだと主張しているという直接的な意味合いではなく、主に中国資本や中国系労働者の進出を通じた経済的・社会的な影響力の増大を指す。歴史的に見れば、中国は1964年に毛沢東共産党主席が日本の北方領土返還要求を支持する談話を出した例があるものの、これは当時のソ連との対立関係を背景としたものであり、一貫した立場ではない。実際、近年では、北方領土をめぐる日ロの対立に対し、「二国間の問題だ」としつつも、ロシア側に理解を示す発言も見られる。

しかし、注目すべきは、ロシアによる北方領土開発への中国企業の関与である。特に2010年代以降、ロシアが北方領土を含む極東地域への外国投資を積極的に呼び込む中で、中国企業が水産加工や建設、観光などの分野で合弁事業を提案し、実際に一部で事業着手が確認されている。例えば、国後島でのナマコ養殖事業や、建設ラッシュに伴う中国人労働者の流入などが報じられてきた。ロシア側は、開発のテコ入れとして韓国など他国企業にも参画を求めているものの、経済的・地理的な結びつきが強い中国の影響力は無視できない。ロシア経済がウクライナ侵攻後の西側諸国の制裁によって中国への依存度を一層高めている現状は、この傾向をさらに加速させる要因となっている。

日本政府は、北方領土が日ロ間の問題であるとの立場を堅持し、第三国による経済活動を容認していない。しかし、ロシアの実効支配下で、中国資本が巨額の投資を行い、インフラ整備や産業開発に深く関与することは、島の経済・社会構造を不可逆的に変化させ、日本の返還交渉をさらに困難にする可能性がある。

懸念の根底にあるのは、ロシアの経済的苦境につけこむ形で、中国が自国の国益に適う形で北方領土の現状を変質させ、結果として日本の領土復帰を阻むような環境を作り出すのではないか、という警戒感である。これは、尖閣諸島周辺における中国公船の活動の活発化や、北海道の森林・水源地などの中国資本による買収といった、他の領土・安全保障上の懸案と連続した問題として捉えるべきであり、日本は外交・経済両面でこの「中国化」の動きを強く注視し、ロシアに対し主権を侵害する第三国の関与を排除するよう粘り強く働きかけていく必要があるだろう。

今後、ロシアと中国の関係がさらに緊密化する中で、北方領土における中国の存在感は増す可能性が高い。これは、領土問題の解決を目指す日本にとって、極めて重く複雑な要素を加えるものである。

(ジョワキン)

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