連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.68『タイムドリップコーヒー』
連載•小説
2025/12/07
コーヒーが好きで家でも毎日飲んでいる。インスタントだろうがドリップだろうが、家で飲むのに味は期待してない。俺にとってコーヒーというものはイコール喫茶店で飲むものであって、味覚、視覚が一緒になっており、美味いコーヒーは喫茶店だけで飲めるという思考になっている嗜好品である。
ところが先日、『匠のドリップコーヒー』というのを飲んだら、突然、自分の部屋が喫茶店のようになった。今までで一番美味かった、というよりも、一番、喫茶店に来たみたいだったのである。試しに目をつぶってみたのだが、いつか行った懐かしい居心地のいいどこかの喫茶店にいる気分になった。俺の意識の中では、とうにやめた煙草を吸い、懐かしい友達の話し声が聞こえ、口の中はナポリタンの味をしていた。
家でコーヒーを飲んでこんな感覚になったのが初めてだった俺は『匠のドリップコーヒー』を、ドリップコーヒーではなく、タイムドリップコーヒーと呼びたくなった。
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