連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.66『ひとり木下大サーカス~その2』
連載•小説
2025/11/30
ステージには2人のピエロが登場しておどけながら客席を回っている。サーカス初体験の俺は、もうこれだけで興奮した。続けて、照明が切り替わると、派手な音楽と共に団員が高い鉄骨の塔に登り始めた。緊張と緩和ではなく、ピエロの緩和のあとの緊張。俺は先ほど売店で買ったポテトとコーラを口に入れようとしたのだが、息をのむ光景に、ポテトを一本だけ手に持ったままだ。そこから、ショーは畳みかけていった。『地上最大のショウ』『グレイテスト・ショーマン』『チャップリンのサーカス』ああ、俺が今まで観てきた異世界が現実に存在している。おいおい、いつポテトを口に入れればいいんだ!なんなんだこの緊張感は!
「ホワイトチャイガーだ~」
隣の席の男の子が叫んだ。ステージには突如、檻に入ったホワイトタイガーが現れた。
もう、ホワイトタイガーを目の前にポテトを食べるタイミングはどこにもない。その前に俺がホワイトタイガーに食べられてしまう。
(つづく)
TIMES
連載•小説





