連載•小説 写楽=「蔦重・十郎兵衛ほか複数人のプロジェクト名」だと言える理由
写楽=「蔦重・十郎兵衛ほか複数人のプロジェクト名」だと言える理由
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2025/12/01

東洲斎写楽は、10カ月間に140枚以上の作品をリリースした。当時、連作のシリーズは著名な絵師でも10〜20枚程度、人気が出て売れると判断されて初めて30枚超というケースが多く、まったくの新人の絵師が一度に28枚も大判大首絵を発表する事例は他になかった。

 

また、葛飾北斎『冨嶽三十六景』(全46枚)や歌川広重『東海道五十三次』(全55枚)、月岡芳年『月百姿』(全100枚)等々、カット数の多いシリーズ物は少なくないが、いずれも10~20枚を半年から1年かけて製作するものばかり。そう考えると、写楽作品の特異性と、大勢の彫師・摺師の手配や生産工程の管理、様々なコストを担った蔦重の手腕がなければ不可能だった。

 

そこで注目したいのが写楽の絵柄だ。歌舞伎の役者絵をいくつも継続的に買うのはその役者のファンである。しかも、今なら撮影も短時間だし万単位でコピー・印刷できる写真・動画と違って、彫師が時間をかけて手で彫り、摺師が一枚一枚印刷しなければならない。そこをどう効率化するのかが、量産のカギだった。

 

そこで蔦重が考案したアイデアが絵柄の魅力ある簡略化、特に役者の顔貌のそれだったのではないか、というのが、「写楽=蔦重、十郎兵衛ほか複数名のプロジェクト」説の肝である。これは同時に十郎兵衛という「能」の役者が「歌舞伎」の役者絵に関わった理由にも繋がっていく。(つづく)

主な参考文献:冨田芳和『プロジェクト写楽』武田ランダムハウスジャパン

(西川修一)

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