最近、日本国内でもローンオフェンダー(Lone Offender)という言葉がテレビや新聞で使われている。ローンオフェンダーとは、特定のテロ組織や犯罪組織に属することなく、単独でテロ行為や不特定多数を標的とした重大な犯罪に及ぶ個人を指す。この呼称は、かつて使用されていた「ローンウルフ(一匹狼)」という表現に代わり、近年、国際的・公的機関で使用されることが増加している。「ローンウルフ」が持つ「孤高の戦士」のような美化のニュアンスを排し、「単独の攻撃者」または「単独の犯罪者」という客観的な意味合いを強調するためである。
組織的なテロ行為は、厳重な監視体制や通信傍受、サイバー監視などにより実行が困難になりつつある。その結果、世界的にローンオフェンダー型の犯罪が主流になりつつあるのが現状である。この種の攻撃は、周到な計画や大規模な連携を必要としないため、従来の組織に対する監視網をすり抜けやすく、予測が非常に困難であるという特徴を持つ。
近年、日本においても、テロ行為にとどまらず、社会的な不安や特定の対象への恨みを背景とした、不特定多数への危害を目的とする事件がローンオフェンダーによる犯罪として認識されている。例えば、無差別殺傷事件、要人襲撃事件、放火事件など、社会的影響の大きい事件において、実行犯が特定の組織に属さず単独で犯行に及んでいるケースがこれに該当する。
ローンオフェンダーの犯行に至る動機や背景は多様であるが、いくつかの共通する傾向が指摘されている。まず、彼らの多くは仕事や人間関係のトラブルから社会的なつながりを断ち、社会的孤立を深めているケースが多く見られる。精神的な問題を抱え、人生に対して強い絶望感や恨みを抱くことで、社会全体や不特定多数に対する攻撃へと動機が過激化する。
次に、彼らはインターネット上の過激派のプロパガンダや特定のイデオロギーに触れることで、自己の不満や絶望感を正当化し、自己の行動を「社会への報復」や「大義のための行為」と捉え始める場合がある。組織に直接関わらなくとも、ネットを介して思想的・イデオロギー的過激化し、犯行計画を立てるケースが目立っている。
さらに、犯行を実行する前に、自身の意図を第三者に漏らしたり(漏洩)、特定の人物や思想に極度に執着したり(執着)、自身を英雄や戦士と同一視したり(同一化)するなどの傾向が見られる。これは、組織的なテロリストと比較して、ローンオフェンダーが犯行を周囲に知らせようとする傾向が強いことを示唆している。
単独犯行であるローンオフェンダーの脅威に対抗するため、各国の警察・治安機関は対策の強化を急いでいる。犯行前の前兆に関する情報を集約し、関連性の低いと見られがちな情報(不審な物品購入、人間関係のトラブルなど)を総合的に分析する情報収集と分析の強化が図られている。
また、警察だけでなく、地域社会、学校、職場、精神衛生の専門家など、多様な主体が連携し、孤立している個人や行動に懸念がある人物に関する情報を共有し、早期に適切な支援や介入を行う地域連携の重要性も高まっている。加えて、匿名性の高いネット空間で過激な思想に触れたり、犯行計画を共有したりする動向を把握し、対策を講じることも不可欠である。
ローンオフェンダーによる犯罪は、従来の治安対策の盲点を突くものであり、その予防には、社会全体の「孤立を防ぐセーフティネットの再構築」と「早期の兆候を見逃さない警戒体制」という両側面からのアプローチが必要である。
(ジョワキン)