連載•小説 「他人のマネは嫌い」自ら絵に書き込んだ歌麿の自負心
「他人のマネは嫌い」自ら絵に書き込んだ歌麿の自負心
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2025/11/06

蔦重と歌麿の強力タッグは、幕府のお触れを出し抜いた『高名美人六歌撰』『六玉川』など判
じ絵のシリーズ物をリリースした1794(寛政6)年頃が絶頂期だったと思われる。すでに触れた
『歌撰恋之部』『婦女人相十品』『婦女人相十躰』といった作品群もほぼこの時期のものだ。
この頃の歌麿の作品のひとつ『五人美人愛嬌鏡』の中に、兵庫屋の遊女・花妻を描いた大首絵
がある。花妻が恋人から届いたと思しき手紙を広げて読み耽っている図だが、手紙にはこんな意
味の文章が綴られているのだ。
「私は他人のまねをするのが嫌いだ。歌麿が自分の力で筆をふるい、私の顔立ちを忠実に描い
てくださったので、恋しい時にはその絵を眺めて、あたかもあなたが目の前にいるかのように
心が動かされる。本当に美人画は心の中に深く刻まれる」
他人が書いた手紙の形を取っているが、自らの画力とオリジナリティについての歌麿の強い自
負心が垣間見える。
ところが、それと同じか少し後から、2人の関係に異変が見え始めているのだ。(つづく)
主な参考文献:近藤史人『歌麿 抵抗の美人画』朝日新書
      
(西川修一)

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