政治•経済 米中貿易戦争の終焉と新たな火種:中国が掴んだ「勝利」と次なる戦略目標
米中貿易戦争の終焉と新たな火種:中国が掴んだ「勝利」と次なる戦略目標
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2025/11/07

10月30日に韓国・釜山で開催された米中首脳会談は、激化する貿易戦争における「一時休戦」として世界に報じられた。しかし、このディールの深層を分析するならば、交渉の舵取りは明確に中国側に握られ、中国が戦略的な優位性を確保した事実上の勝利に終わったと評価すべきである。この成功体験こそが、中国に次なる、より大きな外交目標へと踏み出させる決定的な契機となるだろう。

今回の合意内容を精査すると、トランプ政権の強硬な交渉戦術が、期待した最大の成果に結びついていないことが浮き彫りになる。トランプ大統領が強く望んだとされるレアアース輸出規制の完全撤廃は実現せず、中国側が提供したのは1年間延期という限定的な譲歩に過ぎなかった。その見返りとして、米国側は、合成麻薬対策として課していた関税のうち10%分の撤廃という実質的な譲歩を強いられたのである。

この交換条件は、極めて中国有利に働いたと言える。中国は、戦略物資の切り札であるレアアース規制をカードとして保持したまま、米国に関税の引き下げという具体的な利得を吐き出させることに成功した。米国は、強気な関税政策を自ら一部後退させながらも、最も欲した恒久的な成果を引き出せなかったという点で、交渉戦略の失敗を露呈したのである。これは、レアアースという資源の持つ圧倒的な力を背景に、中国がトランプ政権の取引の弱点を見抜き、効果的に交渉を支配した証左に他ならない。

この貿易交渉で得た成功と、トランプ政権の交渉の限界を見極めた自信は、中国を次の戦略的フェーズへと駆り立てるだろう。それは、経済的な利害を超えた、中国の安全保障上の最大の懸案事項である台湾問題に向けられている。中国が次にトランプ大統領から引き出そうとするディールこそ、米国による台湾への不関与の確約である。

中国にとって、貿易や知的財産権の問題はあくまで経済的な対立に過ぎないが、台湾問題は自国の主権と核心的利益に関わる最重要課題である。中国は、貿易交渉で示したように、相手の弱点を突き、経済的なインセンティブや制裁の脅威を最大限に利用する交渉術に長けている。この成功体験を踏まえ、中国は、米国産農産物の継続的な大量購入や、特定の経済協力の拡大といったものをちらつかせつつ、その見返りとして台湾への武器売却の停止や、高官レベルの交流禁止といった、具体的な不関与の確約をトランプ大統領に迫るはずだ。

トランプ大統領は、一貫してディールを最優先する政治家である。中国は、その特性を熟知し、経済的な成果や個人的な勝利を演出しやすい材料を差し出すことで、外交・安全保障上の最大級の譲歩、すなわち台湾への関与の段階的撤退を引き出そうと周到に動くだろう。

今回の貿易交渉が、単なる経済的な一時休戦で終わらないことは明らかである。それは、中国が自らの戦略的な優位性を確認し、次に最大の核心的利益である台湾問題の解決に向けた、究極のディールをトランプ政権から引き出すための前哨戦であったと見なすべきである。米中間の対立は、今、経済から安全保障へと、より根深く、より危険な局面に移行しつつあると言えるだろう。

(ジョワキン)

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