椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第21回 家無き男たち 新宿駅編
連載•小説
2025/08/25
家無き男 新宿駅編
次々と釣り銭の口ふれて行くルーティンワークこなすかのように
何台の電話を探れば十円が拾えるのだろう 新宿駅の
ずらり並んだ公衆電話が撤去さる そこに糧を得る存在を知らず
公衆電話の代わりにコイン探すのは自販機の下か のぞき込んでる
新宿駅の西口広場(今は工事中で広場の面影はないが)に面して、かつては緑色の公衆電話が数十台、並んでいたことがあった。そこで電話していたら、電話機の右下にある釣銭口にさっと指を突っ込んでいく男がいた。淡々と、そして足早に次の電話に。
かつての公衆電話は、時間による従量制で、例えば100円玉を入れて電話をして、70円分の分数しか掛けなかった時は、3枚の10円玉がジャラと釣銭口に戻ってきた。その取り忘れをさぐっていた。足早に去っていくその男の背中からは、何の感情も読み取れなかった。
僕の短歌は「スナップ短歌」と自称している。日常生活の中で、印象的な景色やシーンに出会ったとき、スナップ写真を撮るように、五七五七七で定着する。今で言うと写メ短歌という方が分かりやすいか。
この新宿駅の男の背中が皆さんにもよみがえれば、作者冥利に尽きる。
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