政治•経済 日本がパレスチナを国家として承認できない理由
日本がパレスチナを国家として承認できない理由
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2025/08/15

日本がパレスチナを国家として承認しない背景には、複雑な国際政治、歴史的経緯、そして外
交的配慮が絡み合っている。パレスチナ問題は、イスラエルとパレスチナの間の長年にわたる紛
争に根ざしており、日本がこの問題に対して慎重な姿勢を維持する理由を以下に考察する。
 まず、日本は国際法に基づく国家承認の基準を重視する。国家承認には、一般的に「領土」「
国民」「政府」「他国との関係を結ぶ能力」といった要素が必要とされる(1933年モンテビデオ
条約)。パレスチナはパレスチナ自治政府(PLO)が統治するが、ガザ地区とヨルダン川西岸に
おける実効支配は分断され、イスラエルの占領下にある地域も多い。このため、パレスチナが国
家としての完全な主権を持つ状態にはないと日本政府は判断している。また、パレスチナ自治政
府の統治能力や、ガザを支配するハマスとの関係も、承認の障壁となっている。
 次に、外交的配慮が大きな要因である。日本は米国との同盟関係を外交政策の基軸としており
、米国はパレスチナの国家承認に慎重な姿勢を崩していない。米国は、イスラエルとパレスチナ
の直接交渉を通じて和平プロセスを進めるべきとの立場をとり、単独での国家承認を避けている
。日本がパレスチナを国家として承認した場合、米国との関係に摩擦が生じる可能性がある。さ
らに、日本はイスラエルとも良好な関係を維持しており、中東地域でのバランス外交を重視する
。パレスチナを承認することで、イスラエルとの関係が悪化するリスクを日本は避けたいと考え
ている。
 さらに、国内世論も影響を与える。日本国内ではパレスチナ問題に対する関心は高いとは言え
ないが、国民の意見は多様であり、性急な国家承認に対する明確な支持は形成されていない。政
府は、国内の分断を避けつつ、国際社会での立場を損なわないよう、慎重な対応を求められてい
る。それでも、日本はパレスチナへの支援を積極的に行っている。1993年のオスロ合意以降、日
本はパレスチナ自治政府に対し、経済支援やインフラ整備を通じて和平プロセスを支えてきた
。2022年までの日本の対パレスチナ援助総額は約20億ドルに上り、教育や医療分野での協力も進
んでいる。このような支援を通じて、日本はパレスチナの国家構築を間接的に後押ししつつ、公
式な国家承認には踏み込まないバランスをとっている。
 日本がパレスチナを国家として承認しない理由は、国際法上の基準、米国やイスラエルとの外
交関係、そして国内世論の複雑さが絡み合った結果である。日本は和平プロセスの支援を通じて
中東の安定に貢献する道を選び、性急な承認よりも長期的な視点での関与を優先している。この
姿勢は、国際社会での日本の立場を反映した現実的な選択といえよう。

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