2025/08/07
検察や警察ら捜査機関による不適切な取り調べが後を絶たない中、取調室の様子を録音・録画する「取り調べの可視化」が拡大される見通しだ。刑事司法手続きの在り方を検討してきた法務省の有識者会議が7月24日、最終報告書を取りまとめ、可視化の対象範囲拡大などを議論する新たな検討の場を設けるよう政府に求めた。現在は、裁判員裁判事件と検察の独自捜査事件で逮捕・勾留された容疑者について、取り調べの可視化が義務付けられている。ただ、不適切な取調は、逮捕・勾留されていない容疑者らのケースで相次ぎ、任意事件でも可視化を法制化するよう求める声の噴出につながっている。可視化の対象拡大へ、今後の法改正に向けた動きが注目される。
▼捜査側は拡大に慎重「供述得にくくなる」
法務省の有識者会議は、2019年に全面施行された改正刑事訴訟法の付則に基づき、刑法学者や法曹三者、マスコミ関係者らが約3年間、計21回にわたって同法で導入された可視化など新制度の課題について議論を進めてきた。
報告書は、被疑者らに検察に有利な供述を仕向ける「供述誘導」疑惑が発覚した2019年の参院選の大規模買収事件の任意聴取について、不適正な取り調べが行われたと言及。可視化の範囲を巡り、「逮捕・勾留されていない容疑者にも対象範囲を広げるよう検討すべきだ」との意見が盛り込まれた。
一方、検察側など慎重派からは、「容疑者の供述を得にくくなるなどの弊害があり、対象範囲の拡大は適当でない」「警察では膨大な数の容疑者取り調べを行い、人的・物的負担が生じる」などと可視化に反対する意見も目立った。
▼適正な取調を促す効果
可視化の拡大に消極的な検察・警察からは、「カメラの前では本音で話さないため、供述が得られにくい」との意見がかねて根強くある。否認事件など取り調べで重要な供述を引き出すことが求められる事件では、可視化がその足かせになりかねず、捜査機関側の意見は一理あるだろう。
ただ、可視化されていない事件で不適正な取り調べが相次いでいる実態を踏まえると、可視化が捜査機関側に適正な取り調べを促す一定の効果があることも事実だ。報告書の指摘通り、可視化の任意聴取などへの拡大は不可欠となっている。
さらに、可視化の拡大は、捜査機関にとっては重要な供述が得にくくなるといったデメリットばかりではなく、「違法な取り調べを受けた」などと疑われずに済む利点もあるはずだ。
任意聴取でも可視化を義務化するとなれば、機材などハード面の体制整備も急務となる。日本でも司法取引が導入され、刑事裁判では証拠のIT化が進むなど、刑事司法は急速な変化を遂げている。取り調べのあり方も、実態を踏まえた変化が求められるのは言うまでもない。
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