連載•小説 江戸城内で田沼意次の子・意知に斬り付けた男
江戸城内で田沼意次の子・意知に斬り付けた男
連載•小説

2025/06/26

 田沼意次の嫡男・意知(おきとも)は、1783(天明3)年11月に35歳で老中に次ぐ重職・若年寄の座についたばかりだった。徳川家基「暗殺」で一橋治済の子・家斉が11代将軍となることが確定して4年以上経っていた。

 

父・意次を継いでナンバーワン権力者となることは確実で、幼い家斉を奉じつつ開国政策や利根川流域蝦夷地の開発といった大型プロジェクトを繋いでゆくはずだった。

 

ところが、その道は突如として閉ざされることになる

 

1784(天明4)年3月24日夕方、江戸城で老中若年寄が詰める御用部屋下・若年寄部屋で執務を終えた意知が、城を出るべく同僚3人と部屋を退出、新番所前を通り過ぎたあたりだった。そこに新しく詰めていた番士・佐野善左衛門政言が、突然「覚えがあるであろう」と3度叫ぶや否や、意知の背後から斬りかかった。

 

肩に長さ3寸(約10㌢)、深さ7分(約2.65㌢)の傷を負い、逃げようとした意知に政言はさらに斬り付ける。同僚3人は意知を助けようとせずに近くの詰め所へ逃げ込み、意知もその後を追う。(つづく)

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