2026/06/29
ワールドカップが開幕して日本のファンやメディア報道では盛り上がっているように見えるが、海外では必ずしも熱気があるわけではない。
その理由は、FIFAの大会運営に公式転売システムが導入された結果、転売価格の上限撤廃と「ダイナミックプライシング(価格変動制)」により、FIFAの公式再販サイトで決勝戦のVIP席のチケットが1枚1億円を超えるなど、一般のファンが手を出せないほど高額化。トランプ政権によるセキュリティ審査の大幅な厳格化により、海外サポーターのビザ免除プログラム(ESTA)が直前で突然取り消され、イランやアフリカ諸国(コンゴ、コートジボワール)を含む約40カ国・地域が渡米できない。欧州圏のスコットランドのファンも、規制対象にされるなど、「サッカーを通じて世界を一つにする」というFIFAの理念に水を差す動きが見られるからだ。
アメリカ建国250周年イベントの一環としてトランプ政権によるトランプの為のワールドカップに欧州ファンをはじめ、観戦をボイコットする動きもみられる。
だが、今回のWCで実現すれば決勝戦以上に注目されることが確実なのがイランVSアメリカの対戦だろう。イランが28日のエジプトとの試合に勝利し、グループリーグG組を1位で通過し、決勝トーナメントに進出すれば、ベスト8を決める7月6日 シアトルの試合で現実となる可能性がある。
双方にとっては“絶対に負けられない戦い”となり、極めて不安定な状態にある停戦交渉にも影響すると思われる。
「死の試合(The Death Match)」という試合がある。1942年8月9日にナチス・ドイツ占領下のキエフ(現ウクライナ)で、地元選手たちで構成された「FCディナモ・キーウ」が、ドイツ軍人チーム「フラッケルフ」と対戦した。ハーフタイム中にウクライナ選手の控室にドイツ軍将校が現れ、「後半はわざと負けろ。さもなければ大変なことになる」と脅迫。FCディナモのDFアレクセイ・クリメンコがドイツチームのディフェンスを抜き去り、ゴールの前までボールを運んでゴールを決めずに、反転してピッチの中央へボールを蹴り戻した。スタジアムの観客は歓声を上げたが、選手たちは試合直後に逮捕され、全員が銃殺されたとされる。もっとも目撃者の証言では、「死の試合」はフィクションとして否定されており、戦後にソ連の宣伝機関によって創作されたプロパガンダだったとされる。
史実は、試合に参加した選手が数日後にスパイ容疑で逮捕され、強制収容所に入れられ、数名が死亡している。生き残った選手もソ連からは対独協力者として監視され、全員ドイツ軍に銃殺されたというプロパガンダとも整合性がないので、戦後に強制収容所に入れられた選手もいたという。
1981年に『勝利への脱出』という米映画が製作されている。サッカーの王様ペレ、ボビー・ムーア、オズワルド・アルディレスら、実在の名選手が出演した映画だが、ドイツ軍チームと対戦するのはウクライナ人でなく、連合軍捕虜に変えられた。

青山みつお
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