政治•経済 社会•事件 独禁法違反事件で「起訴へ」の大誤報 朝日新聞は2段のおわびのみ 問われる倫理観
独禁法違反事件で「起訴へ」の大誤報 朝日新聞は2段のおわびのみ 問われる倫理観
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2026/05/04

 本来は刑事責任が追及されるはずがないのに、いきなり「起訴へ」と名指しで報道された企業としてはとんでもない名誉毀損だろう。運送業者などに向けた軽油販売で価格カルテルを結んだとして石油販売5社が独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で4月17日に起訴された事件を巡り、朝日新聞が同16日、起訴されるはずのない2社も含めた「7社起訴へ」と大誤報をやらかした。7社全ての社名をご丁寧に紙面に載せて「起訴へ」と前打ち報道したが、結果的に大失態。ただ、朝日は後日、「訂正しておわびします」と短い2段の記事を出しただけの対応にとどまっており、報道機関としてもモラルが疑われる。

■3年ぶりの刑事告発

今回の価格カルテル事件では、公正取引委員会の刑事告発を受けた東京地検特捜部が4月17日、東日本宇佐美(東京)、ENEOSウイング(愛知)、エネクスフリート(大阪)、キタセキ(宮城)、共栄石油(東京)の5社を独禁法違反で起訴した。特捜部などによると、5社は2024年10~12月、都内の飲食店で運送業者などへの軽油の販売価格について協議し、引き上げたり引き下げ幅を抑えたりするなど合意。価格競争を制限したとされる。

独禁法を所管する公取委は通常、企業による談合事件などを摘発しているが、立ち入り検査をきっかけに課徴金納付命令や排除措置命令といった行政処分に至るのがほとんどだ。今回のケースのように刑事事件に発展するケースは珍しく、公取委による刑事告発は2023年2月の東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件以来だった。

国民生活にも大きな影響を与える珍しい価格カルテル事件なだけに、朝日新聞の担当記者に焦りがあったのだろうか。告発や起訴を待たずして他社に抜け駆けて報じたわけだが、まさかの起訴されない2社までも「起訴へ」と大誤報をやらかしてしまい、2社の名誉を大きく傷付ける形となった。

■前打ち合戦による犠牲

読売新聞が昨年8月、国会議員の秘書給与詐欺事件を巡り、実際の捜査対象とは異なる別の国会議員名を出し、「特捜部が強制捜査へ」と大誤報をやらかした。にわかに信じがたい誤報で、読売は関係した記者らを処分し、社会部長更迭など厳格な対応を取った。

マスコミ各社が、「逮捕へ」「起訴へ」などと前打ち合戦を繰り広げるのは、国民の知る権利に応える意味でも、重要なことだろう。ただ、誤報によって書かれた企業や個人が犠牲となり、名誉を傷付けるようなことは決して許されない。朝日新聞は読売を他山の石にすらできなかったのだろうか。誠実ある対応が求められる。

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