政治•経済 社会•事件 高市首相の悲願、国旗損壊罪は必要ですか?
高市首相の悲願、国旗損壊罪は必要ですか?
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2026/07/02

 「国旗損壊罪」を新設する法案(損壊等の処罰に関する法律案)を、自民、維新、国民民主、参政の4党が6月16日に共同提出。6月26日の衆議院内閣委員会で可決され、7月中旬までの今国会の会期中に成立する公算が大きいとされる。

 だが、同法案には反対意見も多い。代表的な反対意見を紹介しよう。

日本弁護士連合会(松田純一会長)は、内閣委員会で可決された6月26日に「内心の自由や表現の自由を侵害するおそれがあり、罪刑法定主義の観点からも問題がある」との反対声明を出している。 

日本ペンクラブ(桐野夏生会長)は、 6月25日に記者会見を開き、「市民の思想や表現の自由を強く制約する可能性が高い」として反対を表明。「表現の自由を大事にしていかないと、この国の姿が変わってしまう」と危機感を示している。

衆議院での参考人質疑においても、野党側の有識者(武蔵野美術大の志田陽子教授ら)は、「嫌悪感を持った他者からの通報により、表現者が取り調べの対象になるだけで大きな萎縮効果が生まれる」と指摘。憲法訴訟になれば「違憲と判断される可能性が非常に高い」と警告する。

 高市早苗首相の悲願と言われる“国旗損壊罪”だが、法律が制定された場合に起こり得る問題を考えてみよう。

 国旗損壊罪が法律として制定された場合、法の目的が逆用されるのではないかと想像される。法律が制定された結果、国旗損壊行為がかえって増えてしまう懸念がありそうだ。例えば、高市首相に反対する抗議者が首相官邸前で高市政治への反対演説を行って日章旗を燃やしたり、切り裂いたとする。警備の警察官は、法律がある以上は、眼前の違法行為を見過ごすわけにいかず、国旗を損壊した人物の身柄を拘束する。メディアも、逮捕者が出れば報道するだろう。抗議者にとっては格好の宣伝になる。通常ならメディアに報道されないような抗議活動が、憲法21条に保障された表現の自由に関わる重大問題として大きく報道されるのだ。さらに個人ではなく組織化された抗議者たちが何十人もいっせいに国旗を燃やすパフォーマンスを行えばどうなる? 国旗損壊罪を制定した結果、これまで公衆の面前で燃やされたり、切り裂かれることの殆どなかった日の丸の旗が損壊される本末転倒の結果になりかねない。

 アメリカでは、星条旗の損壊は、合衆国憲法が認める表現の自由として最高裁判決で違法でないとされている。小学校の教室にも星条旗が掲げられ、国旗への忠誠が強調される国にも国旗損壊罪は存在しない。

 筆者もこの法案が浮上するまでは、アメリカで国旗損壊が違法でないとは知らなかった。1992年公開のスパイク・リー監督の映画『マルコムX』の冒頭に星条旗が燃やされるシーンがあるが、当時は見たくなければ見ない選択の自由がある映画だから、大目に見られたのだろう、と思っていた。

 海外の自国国旗についての扱いについて調べてみると、国旗損壊罪に相当する法律がある国は、フランス、ドイツ、イタリア、中国、韓国など。

 

 一方、表現の自由を尊重して国旗の損壊を違法としない国家は、イギリス、カナダ、オーストラリア、デンマーク、ノルウェー、スイスなど。

 文化国家として知られるデンマークでは、他国の国旗を損壊すると違法だが、自国の国旗の損壊は違法としていない。従って、自国の国旗を尊重しない国は、日本ぐらいだとする国旗損壊罪支持者の主張は事実と違う。デンマークの場合、他国の国旗の損壊は外交問題になり、国益に反するから禁止するが、自国国旗の損壊は、政府や国家に対する抗議の表現として合法なのだ。国民の為の政治を行っていれば、自然と国民も国家を愛するようになるはずだ、という自信が根底にある。なお、日本に国旗損壊罪がないのは、表現の自由を守る為ではなく、戦前の法律(旧刑法の不敬罪など)を廃止した際、「自国国旗を保護する規定」を入れ忘れたという間抜けな理由による。

 アメリカやイギリスでは、外国国旗の損壊も表現の自由として処罰されない。一方、中国は、自国国旗の五星紅旗を焼いたりすると、最高で3年の有期徒刑(懲役刑に相当)が課されるが、他国の国旗を保護する法律はない。反日デモで日の丸が焼かれても、人民の抗議の意思表示として処罰されることはない。流石中華思想の国なのだ。

高田 欽一

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