連載•小説 お市の方はなぜ柴田勝家に嫁いだのか
お市の方はなぜ柴田勝家に嫁いだのか
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2026/08/17

 清洲会議後の集団指導体制を反古にするようになった秀吉に対し、強烈な危機感を募らせたのが、織田家筆頭家老の柴田勝家と、信長の三男・織田信孝であった。この緊張関係の中で急速に浮上したのが、信長の妹・お市の方と勝家との電撃的な再婚である。

 

お市の方自身に、秀吉への対抗意識はあったのか。結論から言えば、彼女の選択には織田家の正統な血脈と威信を守らんとする、明確な意志が働いていたと見るのが妥当である。

 

かつて近江の浅井長政に嫁ぎ、織田と浅井の激突によって夫を失うという凄惨な過去を背負ったお市。彼女にとって、織田家を長年支えてきた最長老・勝家との結びつきは、家臣の分を越えて急台頭する秀吉の野心を阻むための、極めて現実的かつ力強い政治的選択肢であった。

 

この婚姻は、単なる男たちの思惑による「道具」としての政略結婚にとどまらない。信孝側の熱心な働きかけがあったとされる一方で、お市自身もまた、亡き兄・信長が築き上げた織田家の権威が秀吉一人の手に落ちていく現状を容認し得なかった。

 

彼女は茶々・初・江という三人の娘を伴い、勝家の本拠地である越前北ノ庄城へと下る。それは、秀吉の庇護に甘んじることを拒み、織田家の血筋と誇りを賭けて反秀吉勢力の中核に身を投じる決意のあらわれでもあったとも言える。(つづく)

 

(西川修一)

 

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