2026/06/01
先週の拙歌「金子文子」は、NHKカルチャーセンター青山「福島泰樹・実作短歌入門」の課題詠「映画」に応じたものだった。今週は、他の受講生がどんな歌を詠んだのか、紹介してみる。
大階段逃げる人々その後を重装歩兵踏みつけ砕く 松田保子
見た方はあの階段を乳母車が落ちていく名シーンを覚えているだろう。言うまでもなくエイゼンシュテイン監督作品「戦艦ポチョムキン」だ。小説もよくする松田さんらしい切り取り方で、これが連作7首の掉尾を飾った。
「この金で」村人渡す路銀かな痛む心を村人も持つ 成島徹子
松本清張原作、野村芳太郎監督作品「砂の器」。ハンセン病への偏見が生んだ、あの長い悲劇の中から、このシーンを取り出した作者のやさしい心根が浮かび上がる。
混乱と退廃うずまく大戦の 異国の酒場に紫煙のアルト 高岡治美
マレーネ・デートリッヒとゲーリー・クーパーの悲恋「モロッコ」。僕は未見だったが7首で映画を鑑賞したような気がした。選ばれた言葉のどれもが異国情緒を芬々(ふんぷん)とさせる優れた描写に舌を巻いた。
土埃と草いきれの道まよい来てあなたは風の匂いをさせる 臼井敦子
「マディソン郡の橋」を歌った連作の冒頭に置かれた歌。やはり映画と小説の世界観を見事に言葉に定着させた。
雷電の舞踏の果てを蒲團から食み出す うで、あし、首二つ 小河内仁美
水上勉原作、内田吐夢監督作品「飢餓海峡」。三句以降の措辞に驚く。短歌にこんな言葉が使えるなんて。
まだまだ披露したい歌があるが、残念ながら紙幅が尽きた。
TIMES
連載•小説






