2026/05/14
世界中で巻き起こっている「抹茶ブーム」。インバウンド旅行者が国内の抹茶カフェに長蛇の列を作り、2008年にスターバックスが抹茶ラテを世界的に導入してからは、海外のカフェチェーンでも「抹茶ラテ」は定番メニューとして定着した。
こうしたブームを背景に夏や秋に取れる「お茶」の価格は、1年で約2.5倍から3倍に跳ね上がった。その理由は、日本で生産され、消費されていた抹茶が、突如としてグローバルなカフェ市場のプラットフォームに乗ったからだ。
価格高騰は生産者にとって喜ばしいニュースに思えるが、飲食業界は、飲料の原価率は一般的に15〜20%以内に収める必要がある。抹茶の価格が上がり続ければ、カフェチェーンは利益を出せなくなり「取り扱いをやめる」という判断を下す可能性が高い。
案の定、帝国データバンクの調査によると、25年の製茶業者の休廃業件数は過去最高の13件に上ったという。そこで26年5月5日、国内主要茶商社38社は、世界の抹茶市場の健全性と持続的発展に向けた「緊急共同声明」を発信した。
華やかな抹茶ブームの裏側で、日本の「茶業界」はかつてないほどの「構造的危機」に直面しているからだ。
実は緑茶と抹茶は同じ原料から作られる別商品だ。日本で広く飲まれている緑茶の原料は煎茶(せんちゃ)、抹茶の原料は碾茶(てんちゃ)で、栽培方法や加工工程、設備投資額も異なり、臨機応変には切り替えられない。
海外で起きているのは「お茶ブーム」ではなく「抹茶ブーム」で、業界は「抹茶の認知は広がってもそれが緑茶を飲むことにつながっていない」と危機感を募らせている。元々生産量の多かった煎茶の需要は伸びず、碾茶のみに注文が殺到しているのが現状だ。
日本産碾茶不足の間隙をついて、台頭しているのが中国産の抹茶だ。スタバも中国産を一部店舗で採用するようになった。
品質も良い。20年に日本産と中国産抹茶を飲み比べたときは品質に差があったものの25年には日本産に並ぶ質の良い中国産が出回るようになった。
価格は、平均すると日本産の3分の1。日本産ブランドを重視していた海外事業者も中国産などに流れるケースが増えており、スタバの例が象徴するように安くて大量に調達したいバイヤーにとって、いまでは中国産が日本産の代替として十分機能している。緑茶が飲めなくなる日が来るかもしれない。(梛野順三)
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