2026/07/27
6月17日に署名された米・イランの停戦覚書は、7月8日にトランプ大統領の「終了」宣言によって3週間で破綻。4月7日からの2週間の停戦合意から数えても約3ヶ月しか続かなかった。
メディアに登場する識者や専門家は、停戦に積極的でないトランプ政権の思惑について論じ、トランプの対イラン政策を合理的に説明しようとしてきた。ところが、トランプの行動は、アメリカの国益やトランプ政権の政治的利益とも整合性がない為、説明するのが困難な状況になっている。
説明が難しいトランプ大統領の行動原理は、もっと単純に考えるのが正しいのかも知れない。トランプ政権がイスラエルのネタニヤフ首相の要請で、イラン攻撃に踏み切った時から囁かれてきた疑惑が真実と考えるべきなのだ。
つまり、トランプ大統領はアメリカや同盟諸国の利益よりも、イスラエル(ネタニヤフ政権)の利益を優先しており、その理由はトランプの側に何らかの弱みがある為と考えれば、一見、不合理に見える対イラン政策の説明ができる。それ故、トランプの支持者だったMAGA(Make America Great Again)派から、反トランプに転じた者もいる。
トランプの弱みとは、これまで報道され続けてきたエプスタイン・ファイルや女性問題。ユダヤ系財閥からの資金援助等があげられる。
では、誰がトランプに圧力をかけているのか? 男性でないのは間違いなさそうだ。トランプの性格からして男性からの圧力や脅しには、反発しそうだからだ。とすると女性がトランプ政権を操っているとみるべきだ。イランのペルシャ語コミュニティでは、トランプを動かす謎の女といった単語が頻繁に登場する。イランは、アメリカ軍の攻撃を受けている当事国であり、国家や現体制の存続がかかっているから、トランプ政権の研究においては、どこの国や情報機関よりも真剣に取り組まざるを得ないだろう。今回はイランが警戒しているトランプに影響力を与えている女性を取り上げよう。
まずは、トランプの愛娘イヴァンカ・トランプ。ユダヤ系財閥クシュナー家の御曹司ジャレット・クシュナー夫人で、ユダヤ教に改宗している。旦那のジャレットは、トランプ政権のイラン外交を担当する。イラン政府は、彼とユダヤ系不動産投資家のスティーブン・ウィトコフ(中東担当特使)が停戦交渉に関わっている限りは、恒久的な停戦は難しいと判断している。
次にミリアム・アデルソン。トランプ陣営「最大のメガドナー(大口献金者)であり、ユダヤ系カジノ王だった故シェルドン・アデルソンの妻。トランプ陣営の選挙資金に1億〜2億5000万ドルにおよぶ巨額献金を行い、トランプを資金面で支えてきた。アメリカ大使館のエルサレム移転やエルサレムをイスラエルの首都と認めた宣言。イスラエルによるゴラン高原の領有権の承認。ヨルダン川西岸地区のイスラエル入植地の支持に影響力を行使。トランプからホワイトハウスへの「直接アクセス権」を与えられている。
3人目は、ユダヤ系インフルエンサーのローラ・ルーマー。 イラン政府から、「米政府の内部機能 (インテリジェンス)を破壊・攪乱する危険な存在」として注視されている。彼女は国家安全保障理事会の高官らを「大統領への忠誠心が足りない」として解雇を働きかけ、トランプに実行させたことを誇示。CNN は「トランプが彼女の進言によりNSCの専門家を遠ざけた」と報道し、ルーマーのような「陰謀論インフルエンサー」の感情的な進言(対イラン融和策を『親イスラムの汚染されたインテリジェンス』と批判)で動かされるのは、アメリカの外交判断が予測不能になると、イラン政府を警戒させている。
4人目は、大統領夫人のメラニア・トランプ。スロベニア(旧ユーゴスラビア)出身の元モデルは、ユダヤやイスラエルとは関係なさそうだが、ジェフリー・エプスタインやギレーヌ・マクスウェルとは、トランプと知り合う前から関係があったと言われる。彼女をトランプに紹介したパオロ・ザンポッリも、エプスタインの関係者だった。メラニアが注目されたのは、開戦直後の3月2日、現職ファーストレディとして史上初めて国連安全保障理事会の議長席に座り、「アメリカは世界中の全ての子供たちと共に立つ。平和が皆さんのものになることを願う」と発言。米軍のトマホーク・ミサイルで学童ら約160人が死亡した直後の発言は、イランから「醜悪な偽善」として非難されたが、4月6日も同様の発言を行った。
パキスタンの仲介で2週間の停戦合意が成立した4月8日の翌9日には、トランプに無断でホワイトハウスで記者会見を開き、「私はエプスタインの被害者ではない」と高級売春婦説を否定。議会の公聴会にエプスタインの被害者たち(トランプに強姦されたと訴えている当時未成年の少女も含む)を呼んで、証言させるべきと提案。トランプが最も嫌がる「エプスタイン・スキャンダルへの再注目」 を独断で主導。「停戦反対のユダヤロビーの指示で、『停戦合意を変えなければ、エプスタイン疑惑の闇をさらに暴く』と警告したのでは?」と囁かれた。
政権支持基盤である白人男性向けにマッチョをアピールし、女性蔑視と受け取られる発言の多いアメリカ大統領が、女性に動かされているのは意外に見えるが、紛れもない現実と言えよう。
青山みつお
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